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映画化「ユリゴコロ」のあらすじネタバレ結末

昨年12月に映画化が発表され、再度その名が噂されている『ユリゴコロ』

yurigokoro(出典:@yurigokoromovie

2011年に出版されたこの小説は、2012年の大藪春彦賞に輝き
本屋大賞にもノミネートされた沼田まほかるを代表するミステリー小説です。

『ユリゴコロ』と言えば「イヤミス」(読了後嫌な気分になるミステリー)の
代表格とされているので倦厭される方もいらっしゃるかもしれません。

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確かに全体はひどく暗い話なのですが、
この小説のすごいところは基本的にはハッピーエンドで終わる点です。

「イヤミス」なのにハッピーエンド…この矛盾が『ユリゴコロ』の最大の魅力といえます。

ユリゴコロのあらすじ

母がなくなって、4冊のノートが見つかった

物語は主人公の亮介の一人称で進みます。

鉢高山(おそらく奈良県)の麓にドックランカフェを経営する亮介は、
たった数ヶ月前まで自分が幸せの絶頂であったことに違和感を感じます。

なぜなら、彼の人生はこの数ヶ月で大きく変わってしまったからです。

婚約者の千絵が突然消息を断ち、父親が末期癌と診断された直後、
母が交通事故で亡くなってしまう。

考えられる不幸が一気に押し寄せ、亮介は気持ちの整理もつかないまま、
残された父の看病のために実家を訪れていました。

ある日、実家に帰ると亮介は留守中の父の書斎のから奇妙なものを見つけます。

それは段ボール箱に片付けられた白いハンドバックの中から出てきた黒髪の遺髪でした。

しかも、その遺髪は母の名前である「美紗子」と書かれた古い和紙に包まれていたのです。

亮介には幼少期に不思議な記憶がありました。

それは4歳ぐらいのころ病気で長期入院した前後に、
自分の母親が入れ替わったという記憶です。

父の書斎で見つかった遺髪はどうにも、
つい先日交通事故でなくなった母のものにはみえません。

遺髪と母親の実像との差にひどく混乱した亮介は、
もう一度遺髪を和紙で包みハンドバックの中に片付けてしまいます。

そして、ふと、もう一度段ボール箱を調べてみると
一番底から古ぼけたノートが4冊見つかります。

そのノートにはびっしりと文字が書かれてあり『ユリゴコロ』と題されていました。

気になった亮介はノートに書かれた文章を読み進めます。

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もし家族が殺○鬼だったら

ノートには衝撃的なことが書かれていました。

それは、殺しに取りつかれた人間によるあまりにも生々しい記録だったのです。

そこには、人間が死ぬ瞬間を見る時にだけ心の
『ユリゴコロ』(「より処」のこと)を得ることできるという、
殺○鬼の苦悩がつづられていました。

亮介は一体これが誰によって書かれたのか興味を持ちます。

それと同時に父がとてつもない秘密を隠していることを知ってしまうのです。

ここから先、物語の大半はこのノートの謎を解いていく
ミステリー小説として進みます。

亮介は弟の洋平の力も借りながら自分の両親が
隠していた秘密の中身に近付いていきます。

ノートを読み進めるに従って、この告発者は
自分の母親である美紗子でることが分かってきます。

美紗子は、何人もの人間をあやめることでしか
心の『ユリゴコロ』を得ることができない人間でした。

しかし、一方で自分自信の人間性を心底恥じており後悔もしています。

葛藤と自暴自棄の中で、父と出会い、
初めて人間としての気持ちを取り戻していった美紗子。

しかし、そうした幸せも長くは続きませんでした。

ある事件をきっかけに、美紗子は自らの罪の意識に苛まれることとなります。

そして父に長い長い告白文を書くのです。

亮介が発見した4冊にも及ぶノートはその懺悔の書でした。

ノートを読んだ父と美紗子の家族は衝撃を受け、
美紗子がこれ以上罪を重ねる前に「処分」してしまうことを計画します。

そして計画は実行され妹の絵実子を美紗子の身代わりとして亮介の母親となるのです。

亮介が幼少期に感じた違和感や「美紗子」と書かれた
遺髪はこうした理由から起こった事態でした。

千絵の物語

平凡なミステリーなら、ここで終わってもよさそうなものですが、
『ユリゴコロ』が面白いのはここからです。

物語がノートを軸に進んでいくのと平行して、亮介の婚約者である
千絵の失踪についても真相究明がされていきます。

そこで明らかになったのは千絵はじつは既婚であり、
やくざまがいの夫からひどい暴力を受けていたということでした。

千絵の失踪はその暴力の矛先が亮介に向くことに対する恐怖から来たものでした。

そのことを調べてくれたのは、細谷さんというドックランカフェの従業員です。

彼女は親身になって亮介の相談に乗り、駈けずり回って千絵を連れ戻します。

しかし亮介はこの結果、やくざまがいの男から
不倫の代償として300万円を脅されることになります。

怒った亮介は、金の受け渡しの時を狙って、
この男への復讐を計画します。

ところが計画を実行しようとした瞬間、
男は姿を消し血のついた車だけが放置されます。

金に相当追い詰められていた男ですから、
亮介は「男はやくざの抗争で消されたのだろう」と判断し、
千絵に平和な日々が訪れたことに安堵します。

ノートの物語と、千絵の物語。

この二つの物語が、最後に重なり合って『ユリゴコロ』はクライマックスを迎えます。

二つの物語は一つに

すべての謎が解かれたのち、亮介と洋平は父から思いがけない言葉を聞きます。

「美紗子」は生きているというのです。

ノートによって驚愕の事実を告白され、「美紗子」を「処分」することを
計画した家族でしたが、実際は手を掛ける事ができず「美紗子」は生き延びました。

父は最近「美紗子」と再会しており、余生をもう一度
「美紗子」と過ごしたいと決意していました。

そして亮介と洋平には「美紗子」に会わせたいと思ったのです。

衝撃を受けた亮介は戸惑いながらも実の母親である「美紗子」と対面します。

するとそこには見慣れた顔がありました。

なんと千絵を連れ戻してくれた細谷さんという従業員こそが、
亮介の実の母親である「美紗子」その人だったのです。

いやはや、衝撃の結末でした。

「勘のいい人は気付いたことだろう」とあとがきで
書かれていましたが、私は全く気付きませんでした。

千絵の旦那である男を葬ったのは細谷さんでした。

そして父が細谷さんと最後を迎えるために、
息子達と今生の別れをするところで物語は終わるのでした。

「美紗子」は誰に許されたのか

この物語を読んで多くの読者が「イヤミス」といいたくなる気持ちは分かります。

結局、「美紗子」は何の償いもすることなくハッピーエンドを迎えますし、
「美紗子」を演じ続けた絵実子のことを考えると
父の対応には納得できないものを感じます。

しかし私がなによりもモヤッとするのは「美佐子」が細谷さんとして
登場したときになんとも晴れやかな感覚になることです。

そこには「快楽殺○鬼」としての「美紗子」ではなく、
「息子の嫁の敵を取った細谷さん」として登場しており、
すべての咎が許された印象すら受けます。

「美紗子」は千絵を救うことで許されました。

それは亮介が「殺○」を決意することで許されたとも言えます。

ならば、「美紗子」の咎は亮介に受け継がれたことにはならないでしょうか。

この小説を多くの方が「愛の物語」と言われています。

亮介の決意は千絵への深い愛情と同時に「美紗子」への愛の証となったのかもしれません。

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