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映画化「夜は短し歩けよ乙女」のあらすじネタバレ結末

yoruhamijikashi
今春、アニメ映画化が決定している「夜は短し歩けよ乙女」

2006年に角川書店より出版され120万部を売上げた森見登美彦の代表作です。

山本周五郎賞を受賞し直木賞にもノミネートされたこの作品は、
独特の言い回しが特徴で多くの小説ファンを魅了しました。

今回は、そんな本作のストーリーについてご紹介したいと思います。

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京都を舞台にした青春ラブストーリ

京都の大学(京都大学がモチーフ)に通う「先輩」は
サークルの後輩である「黒髪の乙女」に恋をします。

しかし、悲しいかな恋愛経験の少ない先輩は、積極的なアプローチの
仕方も分からないまま黒髪の乙女との距離を縮めるために四苦八苦します。

時には夜の街に繰り出す彼女を見守ったり、時には彼女の思い出の古本を探したり。

しかし、その思いは中々意中の彼女には届きません。

そして、ついに学園祭でのある出来事をきっかけに彼女との距離が急接近。
最後は見事「黒髪の乙女」の心をつかむのです。

先輩と黒髪の乙女の独白で進む物語は4つの独立した短編章に
分かれており大きくは起・承・転・結に対応しています。

全体を貫かれるエピソードは突拍子もないですが、
恋愛小説としてはオーソドックスな展開を見せます。

1章で先輩は黒髪の乙女とお近付きになりたくて、
サークルOBの結婚式の二次会を欠席した彼女の後をつけていきます。

そこでは彼女を中心に摩訶不思議な出来事が次々と起こり、
その中で彼はますます彼女に惹かれていきます。

2章では彼女が思い出の古本を探していると知るや、
古本の獲得のために先輩は激辛鍋を食す我慢大会に出場します。

意識が朦朧としながら頑張りぬいたものの、結局は偶然彼女の手に
古本が舞い戻るという形で彼の努力は徒労となってしまいます。

3章の舞台は学園祭です。

先輩がなるべく彼女の目にとまる作戦(ナカメ作戦)を実行する中で、
黒髪の乙女がヒロインを務める演劇のヒーロー役を奪い取り、
ついにを彼女を抱きしめることに成功します。

そして4章ではこれまでの先輩の努力が全て報われる形で、
黒髪の乙女は彼の思いを受け入れデートに繰り出すのです。

あらすじをみれば、まさに青春恋愛小説の王道のようなストーリーで、
今流行の「ムズキュン」に通じるものを感じ、なるほどキャストに
星野源が選ばれるわけだと大きく納得させられてしまいました。

黒髪の乙女の魅力が、積極的な天然キャラである点も「逃げ恥」そっくりです。

黒髪の乙女は大学に通いたての一年生で、あらゆることに興味を持って行動する乙女です。

みんながしり込みするような状況を難なく乗り越え、
京都の裏世界を牛耳る李白さんと他人の借金をかけて飲み比べをしたりします。

その純真さがまさに黒髪の乙女の魅力であり、
「御都合主義」的恋愛小説(本編の中でそう自認している)の
安心感もあいまって、読者は彼女に心置きなく惹かれてしまうのです。

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乙女はなぜ夜の街を歩くのか

「夜は短し歩けよ乙女」

このタイトルを初めて聞いた時、その哲学的な響きに心躍り興味をそそられました。

この「夜は短し歩けよ乙女」と言う言葉は物語では3度出てきます。

1度目は夜の街で飲み比べをしている際、
無垢でうわばみの黒髪の乙女に対し李白さんが突然囁きます。

2度目はのみ比べに勝利し、大団円で物語が締めくくられた際に
彼女が確認するように呟きます。

3度目は物語の終盤に先輩への気持ちに気付きつつある
彼女が李白さんに再度囁かれるのです。

「ムズキュン」に限らず恋愛ストーリの王道の一つに、
若い女性に振り回される男性というものがあると思います。

ヒロインは積極的に男性を振り回さなければなりませんが、
ただ単なるおてんば娘だと恋愛にはなりません。

「夜は短し歩けよ乙女」というフレーズは「黒髪の乙女」が
自らを顧みる際に出てくるキーワードです。

それは「歩けよ」といいながら、逆説的に「歩いてきた」ことを認識させる言葉となり、
彼女がただのおてんば娘ではなく恋する乙女であることを読者に感じさせるのです。

このあたりの言葉の選び方が作者の森見登美彦の奇才たる所以で、
この小説の最大の魅力だと思います。

森見は新しい京都を作りだした

私は2000年代を学生として京都で過ごしましたが、
この小説が出版された時、それはそれはすさまじい人気でした。

昨年注目された「君の名は。」の小説販売数が119万部だそうですから、
120万部といえばかなりのものであることが分かると思います。

多くの学生がこの小説を読んで引き込まれたのは、
自分達が生活している京都の街がこれでもかというほど詳細に描かれ、
物語の一部に自分がいるような気になるところです。

そこには京都タワーや清水寺といったいわゆる古都・京都の名所は出てこず、
古本市や吉田神社といった、学生街としての京都が描かれていました。

奇しくも、2000年代は京都がサブカルの中心として、一大飛躍を遂げていく時期です。

京都アニメーションが実在する場所を舞台にしたアニメを
次々とヒットさせ「聖地巡礼」と呼ばれる文化が急速に拡大しました。

そこにあったのは、私たち読者が生活する平凡な現実の中に、
突拍子もないドラマが起こることへの期待感です。

「夜は短し歩けよ乙女」がただの青春恋愛小説だったら、
これほどまでの評価はされなかったでしょう。

李白さんをはじめ摩訶不思議なキャラクターや空から錦鯉が降ってくるといった
ありえない出来事が京都という舞台の中で見事に描かれ、

自分達が生活する現実の裏側にはこんな不思議な世界が広がっているのかと
ワクワクするから、誰もが先輩の恋を応援してしまうのです。

それは、どこかで私たち自身が黒髪の乙女を探しているということかもしれません。

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